アプリで問題を解いていたのだが、どうしても頭に入らない。時々こういう問題がある。

問題は司法試験平成23年民事系の第14問の肢3だった。問題文は下記の通り。(https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00047.html

動産売買の先取特権者は,買主が目的動産を用いて施工した請負工事の請負代金債権に対しては,原則として物上代位権を行使することができないが,請負代金全体に占める当該動産の価値の割合や請負契約における請負人の債務の内容等に照らし,請負代金債権の全部又は一部を動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には,物上代位権を行使することができる。

何度も読んでみたが、どうしても頭に入らないので、この問題のことを調べているうちに(何か解説が読めないか、と思ったのだ)元になった判例に行き当たった。平成10年12月18日最高裁判所第三小法廷決定の『 債権差押命令及び転付命令に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告』である。(https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52256

要旨だけ見るとちょっとわかりにくいが、事件の概要は以下のページ(有斐閣)の無料で読めるさわりが掴みやすい。
https://yuhikaku.com/articles/-/14851

Aは、Bとの間でターボコンプレッサー(本件機械)の設置工事を2080万円で請け負う旨の契約を締結し、その履行のために本件機械を1575万円でX(債権者・相手方・相手方)に発注した。Xは、Aの指示に基づいて本件機械をBに引き渡した。その後Aが破産したので、Xは動産売買先取特権を行使して、AがBに対して有する本件機械設置工事の請負代金債権について、1575万円の限度で仮差押決定を受け、Bは仮差押債権額1575万円を供託した。

「動産」がこのターボコンプレッサーで、「目的動産を用いて施工した請負工事」とは、設置工事のことだと分かる。具体的な内容は抽象化された問題文よりもずっと身近で分かりやすい。Aが破産し、機械の売買代金(1575万円)を回収できなくなったX(動産売買の先取特権者)は、AがBに対して有する機械の設置工事代金債券(2080万円)を、機械の売買代金債権の限度で差し押さえた、というのが問題の内容だ。

そこで要旨を改めて読んでみる。

 一 請負工事に用いられた動産の売主は、原則として、請負人が注文者に対して有する請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができないが、請負代金全体に占める当該動産の価額の割合や請負契約における請負人の債務の内容等に照らして請負代金債権の全部又は一部を右動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には、右部分の請負代金債権に対して右物上代位権を行使することができる。
二 甲から機械の設置工事を請け負った乙が右機械を代金一五七五万円で丙から買い受け、丙が乙の指示に基づいて右機械を甲に引き渡し、甲が乙に支払うべき二〇八〇万円の請負代金のうち一七四〇万円は右機械の代金に相当するなど判示の事実関係の下においては、乙の甲に対する一七四〇万円の請負代金債権につき右機械の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情があるということができ、丙は、動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができる。

この事例では、BがAに支払うべき2080万円のうちの1540万円は、まさにこの機械の売買代金に相当していたため、物上代位が認められた、というのが結論。

問題が頭に入らないのは抽象化された内容に、私の頭が追いついていないことを意味している。ここまで元に戻せば(抽象から具体へ戻す)、理解可能になる。ここまで1問1問に対して捉え直すのは手間だし、時間がかかるから効率的とは言えないが、意味わからないまま結論を覚えるよりずっといいのかもしれない。