本日の頭に入らないシリーズは、令和6年司法書士試験午前の部問1から。

報道機関が、取材の目的で、公務員に対し、国家公務員法で禁止されている秘密漏示行為をするようそそのかす行為は、その手段・方法にかかわらず正当な取材活動の範囲を逸脱するものであるから、これを処罰しても、憲法第21条の趣旨に反しない。

この肢の正誤は「誤」です。どこが「誤」かというと、「その手段・方法にかかわらず」の部分です。

この話がどの判例を指しているのかはすぐに分かります。外務省機密漏洩事件、通称西山事件です。山崎豊子原作のドラマ「運命の人」でも知られています。
外務省機密漏洩事件(裁判例検索)

要旨の中に上記が誤りである理由があります。

報道機関が公務員に対し秘密を漏示するようにそそのかしたからといつて、直ちに当該行為の違法性が推定されるものではなく、それが真に報道の目的からでたものであり、その手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである限りは、実質的に違法性を欠き正当な業務行為である。

当初から秘密文書を入手するための手段として利用する意図で女性の公務員と肉体関係を持ち、同女が右関係のため被告人の依頼を拒み難い心理状態に陥つたことに乗じて秘密文書を持ち出させたなど取材対象者の人格を著しく蹂躪した本件取材行為(判文参照)は、正当な取材活動の範囲を逸脱するものである。

公務員をそそのかしたからといって、直ちに違法になるわけではないけど、手段として肉体関係を持ったあたりは正当な取材活動を逸脱している、ということです。

憲法問題の場合、判旨をざっくりと理解するだけでは間違えるケースが多いので要注意だな。