司法書士試験 令和6年度 問2(午前の部 問2)の肢から。

親は、子の将来に関して最も深い関心を持ち、かつ、配慮をすべき立場にある者として、憲法上、子の教育の自由を有する。

この「自由を有する」の箇所が正しいのかどうか一瞬迷いました。この問題文は、憲法26条の解釈問題であり、判例としては建造物侵入、暴力行為等処罰に関する法律違反(旭川学テ事件)の最高裁の判決に基づいています。親は子に教育を受けさせる義務を持っているのは26条から明らかであるとして、自由を有するのかどうか。

第26条

  1. すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
  2. すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

26条だけでは、判断が出来ません。そこで旭川学テ事件の登場です。事件の概要は以下になります。

1956年から1965年にかけて行われた「全国中学校一斉学力調査」に反対した教師Xらが、テストの阻止のために校長を暴行し、建造物侵入、公務執行妨害、共同暴行の罪で起訴されました。Xらは「学力テストは違法だから公務執行妨害は成立しない」と主張しました。

私は最高裁の「学力テストは違法ではない」という結論しか知りませんでしたが、第一審と控訴審は、学力テストが違法であると認定し、公務執行妨害罪の成立が否定されていたんですね。

裁判要旨

二、憲法上、親は一定範囲においてその子女の教育の自由をもち、また、私学教育の自由及び教師の教授の自由も限られた範囲において認められるが、それ以外の領域においては、国は、子ども自身の利益の擁護のため、又は子どもの成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため、必要かつ相当と認められる範囲において、子どもの教育内容を決定する権能を有する。

全文を読むと、上記の問題文の箇所がそのまま述べられています。

まず親は、子どもに対する自然的関係により、子どもの将来に対して最も深い関心をもち、かつ、配慮をすべき立場にある者として、子どもの教育に対する一定の支配権、すなわち子女の教育の自由を有すると認められるが、このような親の教育の自由は、主として家庭教育等学校外における教育や学校選択の自由にあらわれるものと考えられるし(後略)

つまりこの肢は「正」ということになります。