法律系試験は正誤問題が基本なので、正解も正誤しか覚えずに終わることが多い。特に組み合わせ問題は、消去法でも正解が可能なケースが多いから尚更である。問題の解答が誤だった肢を前に、内なる自分は「この回答の正は何か?」と言っているが、案外問題集には「正しくは何か?」まで書いてくれていないので、調べるのが面倒になってスルーしてしまう。
が、それは学ぶ機会を逸失している、と正直思う。
本日は司法書士試験 令和6年度 問6(午前の部 問6)について考える。
ア 不動産の贈与を受け、所有権に基づいて自己の物として不動産を占有する者は、当該不動産について、取得時効を理由として所有権を有することを主張することができない。
イ 期限の定めのない債権の消滅時効は、債務者が履行の請求を受けた時から進行する。
ウ 後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅により当該後順位抵当権者に対する配当額が増加する場合には、当該先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。
エ 時効期間を計算するに当たっては、その期間が午前零時から始まるときを除き、期間の初日は算入しない。
オ 主たる債務者が主たる債務について時効の利益を放棄した場合においても、保証人は、主たる債務の消滅時効を援用することができる。
上記のうち正しいものの組み合わせを選べ、というのが問題で、正しいのは「エ・オ」である。
この肢の中で、私の知識があいまいで怪しいのはイとエである。特に「イ」の消滅時効ジャンルは死ぬほど間違える超不得意分野である。(このジャンルは別途これだけで記事を書こうと考えている)「期限の定めのない債権の消滅時効は、債務者が履行の請求を受けた時から進行する。」は「誤」なのだが、ではこれがどう書かれていれば「正」になるか調べてみる。
ここで民法の出番。
第166条
- 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
- 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
- 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
さらに期限の定めのない債権は、成立の時が「権利を行使できる時」に当たる。つまりその時から消滅時効が進行することになる。「正」になる問題文は以下になる。
期限の定めのない債権の消滅時効は、権利を行使することができる時(成立の時)から進行する。
たったこれしきのことでも、正確に書こうとするとそれなりに調査を要する。でもこの繰り返ししか、私の頭に入る方法がない気がする。
さてもうひとつの怪しい知識「時効期間を計算するに当たっては、その期間が午前零時から始まるときを除き、期間の初日は算入しない。」だが、こちらは「正」なので、そのまま覚えれば良いのだが、この問題文が今ひとつ頭に入らない。早速民法に再登場いただく。
第140条
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
日、週、月又は年によって期間を定めた場合、は1月1日の午前10時に「5日以内」と言ったとすると、その日は計算に入れないので、翌日1月2日が起算日になり1月6日いっぱいまでが期限になる。ではどんな時に初日参入になるか?12月20日に「1月1日から5日以内」と言った場合は、1日の午前0時から計算できることになり、1月5日いっぱいになる。
って、これだけの話だけど、文字で見ると一瞬頭が止まる。
この正誤シリーズしばらく続けてみよう、