不真正不作為犯は、殺人罪や放火罪では成立するが、財産犯についても成立するかという問題があった。不真正不作為犯の定義をまずは再確認。

不作為犯

法律で定められた犯罪を「しなかったこと(不作為)」で実現するケース。不作為犯はさらに「真正不作為犯」と「不真正不作為犯」に分かれる。この2つの違いは、法律の条文が不作為(~しなかった)の形式で書かれているか否かである。法律の条文が不作為の形式で書かれている場合は「真正不作為犯」、書かれていない場合は「不真正不作為犯」になる。

言い方を変えると、
もともと不作為を構成要件としている犯罪を実行するのが「真正不作為犯」
法律の条文が作為の形式で書かれている犯罪を、不作為によって実現する犯罪が「不真正不作為犯」
ということだ。

不真正不作為犯の成立要件

  1. 法律上の作為義務
  2. 作為の可能性・容易性
  3. 不作為と結果の因果関係

財産犯における不真正不作為犯

財産犯での不作為犯を想像できるかというと、抽象度が高くて私には想像しにくかった。こんな時は判例、実際の事件を見てみる。下記がこの例に該当する判例である。要旨は

誤った振込みがあることを知った受取人が,その情を秘して預金の払戻しを請求し,その払戻しを受けた場合には,詐欺罪が成立する。

 最決平成15年3月12日 刑集 第57巻3号322頁
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=50004

これなら分かりやすい。