時効利益は「放棄」できますが、知らない利益は「放棄」できないことになっています。
では、下記の問の答えはどうなるでしょうか?
債務者が時効完成を知らず債務を承認した。債務者は時効の援用をできるか?
答えは「できない」です。
ここで私は、知らない利益は放棄できないはずなのになぜだ?と思いました。
もうひとつ問題です。
債務者が時効完成を知らずに債務を承認した。債務者は時効の利益を放棄したことになるか?
答えは「ならない」です。
この2つの問題を並べると、問題の在り処が見えてきます。1問目の問の答えに対して、私は「時効の援用ができない=時効の利益を放棄した」だと思っていたわけですが、2問目の答えから、この債務者は「時効の利益を放棄したことで、時効の援用ができなくなったのではない」ということが分かります。
1つめの問いで、債務者が時効の利益を援用できないのは「信義則に反する」(ある意味神の声ですね、これ)からなのです。
このように2つの問いに当たることで、頭がすっきりすることはよくありますね。