商業登記法における印鑑証明書の問題

商業登記法における印鑑証明書の問題

商業登記法で考えるのが嫌になる問題のひとつが、印鑑証明書の問題です。私が苦手なだけで、世間の皆様はそんなことはないかもしれないのですが・・・・あれもこれもゴチャまぜに考えると混乱します。まず印鑑証明書の添付を要する場合をざっくり分けてみます。

(A)役員の就任承諾書にかかる印鑑証明書
(B)役員の選定・互選等を証する書面・議事録の押印にかかる印鑑証明書

Aの場合の印鑑証明書添付の目的は、選任された者の実在性の証明です。ですから、再任では不要になるのは当然です。役員の就任承諾書にかかる印鑑証明書には次のケースがあります。

  1. 取締役非設置会社取締役の就任承諾書
  2. 取締役設置会社代表取締役の就任承諾書
  3. 委員会設置会社の代表執行役の就任承諾書

取締役会が設置されているかどうかで、承諾書が必要な場面が変わるのがポイントです。就任承諾書について議事録の記載を援用する場合は、議事録に援用者の実印を押印する必要があります。

Bの場合、印鑑証明書が必要になるのは以下のケースです。

  1. 株主総会または種類株主総会の決議により代表取締役を定めた場合
  2. 取締役の互選によって代表取締役を定めた場合
  3. 取締役会の決議によって代表取締役(または代表執行役)を選定した場合

このケースは、従前の代表者の知らないところで不正に代表取締役が選定されるのを防ぐのが目的です。そのため、選定にかかる株主総会議事録に従前の代表取締役が登記所届出印を押印した場合は、この印鑑証明書は不要になります。同じように、従前の代表取締役が退任し、監査役に選任され、選定決議に監査役の権限で出席し、当該議事録に従前の届出印を押印した場合も印鑑証明書は不要です。

B-1では議長および出席取締役が議事録に押印した印鑑についての印鑑証明。B-2では取締役が互選を証する証明書に押印した印鑑についての印鑑証明。B-3では、出席した取締役および監査役が取締役会議事録に押印した印鑑についての印鑑証明。がそれぞれ必要です。

印鑑証明書の問題と絡んで重要なのが、本人確認証明書です。印鑑証明書で本人を確認をしない代わりに必要になります。本人確認証明書というと、具体的なイメージが沸かないのですが、「就任を承諾したことを証する書面に記載した氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書」です。まだまだ具体的ではありませんね。住民票や戸籍の附票、印鑑証明書でももちろん構いません。運転免許証やマイナンバーカードはコピーになるので、原本と相違ないことを本人が記載の上で提出します。
ここまで説明すると当たり前の話になりますが、取締役・監査役・執行役の就任登記(再任を除く)で、当該登記の申請書に印鑑証明を添付することとなる場合は不要です。