手続き法(刑事訴訟法・民事訴訟法・行政事件訴訟法など)は、字面だけ読んでいると眠くなります。テレビドラマや映画などで、裁判ものを意識的に見るようにもしています。しかし、実際の裁判を見てみないと実感が沸かない・・・登記も、実際の書類を見て書いてみると、単なる勉強の粋を超えて理解できるようになる。というわけで、学習も兼ねてまずは東京地裁へGO。仕入れた事前知識は、書籍とネット情報程度で裁判所へ向かいました。

事前知識

  • 東京地裁は「霞ヶ関駅」A1出口を出て右側に裁判所合同庁舎があり、地裁・簡裁・家裁が入っている。地下に売店・コンビニ・食堂がある。
  • 入り口で荷物のチェックがある(空港にある金属探知機)
  • 法廷内では、撮影・録音は禁止。メモはOK。
  • 法廷は基本的に出入り自由。途中入室・途中退室もOKだが、立ち見はできないので、満席の場合は傍聴出来ない。
  • 1Fホールに開廷予定を閲覧できるタブレットがあり、そこで当日の裁判予定を見て、傍聴する裁判を決める
  • 初心者は、刑事事件の新件(第1回公判)を見るべし。冒頭陳述を聞いて、事件の全貌を把握した上で裁判を見ることが重要。そのため最高裁や高裁は傍聴には向かない。薬物事案は1回で結審するような事案もあり初心者向け。裁判員裁判は、素人が参加しているため、理解しやすく説明される点は良いが、審理時間が長い(昼を挟んで午後に渡る)。
  • 民事訴訟は訴状の陳述を読み上げないので何が行われているのかつかみにくく、初心者には向かない。
  • 東京地裁は傍聴マニアが多い

いざ「殺人事件」の第2回公判へ

上記事前知識で「初心者は刑事事件の新件」だの「薬物事案」だの書いておいて、全く異なる裁判を傍聴してしまいました。実は1ヶ月ほど前から、この事件の第1回公判を、初傍聴にする予定だったのだが、当日寝坊して行けなかったのです。(開廷は10時でした)翌日も10時には少し遅れたが、取り敢えずあたりを付けていた裁判だったので、第2回公判でしたが「まあいいか」ということで。

開廷中の法廷は、入り口に「開廷中」のランプが付いて、ここでスマホの電源を落としてそっとドアを開けました。裁判員裁判でしたので、広めの法廷で、それなりの数の傍聴席が用意されていましたが、空いていたのは数えるほどの席数。別に有名人の裁判でも何でもないので、東京地裁は傍聴マニアが多いというのは、こういうことでしょうか。空いている席に入れてもらって、傍聴スタートです。

私が入室したときは、検察官が発言していました。傍聴席から見て、左手が検察側です。ドラマを途中から見るようなイメージで、検察官と被告の発言から事件を組み立てながら聞いていました。被告は数年前に危険運転致傷事件を起こしており、その後自分に部屋を貸してくれた人にあれこれ注意され、その人を「黙らせる」目的でナイフを持参して出勤し、職場に怒鳴り込んできた被害者を刺してしまった、ということのようでした。事件は複雑なものではないのですが、検察官の被告への質問が歯切れが悪いというか、何をしたいのかよく分からないのですよ・・・私などが言うことでもないのですが。裁判官も同じように感じていたらしく、途中で「重複ですね」「何がしたいのでしょうか」と検察を牽制していました。

私の斜め前には、昔ながらのクロッキー帳に、イラストや文字を裁判中すっと書き込んでいる男性が座っています。おおーテレビドラマによくある風景やん。

10時に始まった法廷は、11時過ぎにあっさり一旦閉廷になり、午後1時15分から再開とのこと。傍聴人も一旦法廷をでなければなりません。思いの外早く終わったようで、男性が数名「中途半端に時間が空いちゃったなあ」と言いながら出ていきました。本日午後は仕事の都合で、戻る予定でしたので、もう1つ他の裁判を見ることが出来るかどうか、1Fホールの開廷帳を再度チェックに行きました。開廷帳には、午前午後続きの裁判の場合でも、午後の開始時間などは書いていないのかな。見当たりませんでした。

11時から始まったばかりの新件の大麻取締法の裁判があったので、そちらを傍聴することに。

「麻薬取締法違反」の第1回公判へ

こちらも少し遅刻して法廷に入りましたが、こちらはこじんまりした法廷でした。それでも10名程度は傍聴者がいましたかね。こちらの案件は、検察官も裁判官も大変歯切れがよく、事案もすっきりしていて聞きやすい裁判でした。冒頭陳述には間に合わなかったのですが、話は「大麻所持」であって「使用」ではありません。過去に海外で大麻の利用経験のあった被告が、13年ぶりに大麻を使いたくなって、種を輸入を試み、税関で止められて2度失敗。勤務先で、同僚から「Twitterで大麻を手に入れるこのが流行っているらしい」と聞いて試してみたところ、見事購入に成功。奥さんと二人で夫婦の寝室に所持していたところ、捜査に入られ、正直に白状したという単純な事件です。

自白も証拠も明白ですので、焦点は「再犯可能性」についてでした。同じ事実に対し、検察側は「所持の前に、2度輸入を試みていることからも再犯の可能性は高い」よって「懲役6ヶ月」を求刑。弁護側は「13年の間は一切利用も所持もなく、反省していることから再犯可能性は低い」として「執行猶予付き」を主張。次回法廷で、判決言い渡しとなり裁判官が、検察官と弁護士の予定を聞いて、日程を調整して閉廷しました。

裁判は面白い

噂には聞いていましたが、実際に傍聴してみても裁判は面白い。事件そのものの面白さもあるのでしょうが、今回感じたのは、検察官と裁判官の力量にも寄るのではないかということです。麻薬取締法違反の方は、単純明快な事案だったこともあるので、一概に今回見た裁判の検察官と裁判官の実力を比べて良いものかどうか、経験の浅い私にはわかりかねますが・・・ただ、裁判を進行するのは、裁判官・検察官・弁護士であり、その進行具合はそれぞれの腕にかかっている、ということははっきり分かりました。テレビドラマとは違うでしょ、と考えていましたが、案外ドラマ並みに見えた、というのが感想です。やはり重大な仕事ですね、法曹は。

次回12月に、もう少し複雑なそうな裁判員裁判の殺人事件を傍聴してみようと思っています。